1. 注意書き
※この山行は過去の記録(2022年9月4日)です。
2. 御嶽山とは
御嶽山(木曽御嶽山)は標高3,067m、長野県と岐阜県の県境にそびえる成層火山。古くから御嶽信仰の山として社や石碑が点在し、山頂部は火山礫のザレ、下部は石段と樹林帯という表情が切り替わるのが特徴です。ロープウェイを使えば、高山の空気を日帰りで味わえる名峰です。
3. 概要
前夜発の夜行バスで現地入り。少し寝不足のまま朝のひんやりした空気に背筋が伸び、ロープウェイで一気に高度を稼いで歩き出しました。同行はソロ、コースは女人堂と石室山荘を経て剣ヶ峰へ向かう王道のピストン。天気は晴れとガスが交互に訪れ、風は弱めで体感は涼しめ。前日が雨だったため、森林限界までは泥濘と濡れ石に気を遣う一日になりました。上部のザレ帯に入ると一転して乾き、歩きのテンポが軽くなる、そのコントラストがとても印象的でした。
4. 当日の行程(9/4・日)
09:57 飯森高原駅 → 10:03 一の又小屋 → 10:47 女人堂 → 11:49 石室山荘 → 12:15 御嶽山(剣ヶ峰) → 12:43 御嶽山(三角点) → 13:25 石室山荘 → 14:11 女人堂 → 14:46 一の又小屋 → 14:51 飯森高原駅(下山)
(合計 4時間53分・距離 7.2km・登り 984m / 下り 979m・休憩 1時間3分)
ロープウェイの扉が開くと、雲に近い匂いがして、眠気がふっと抜けました。支度を整えて歩き出すと、前日の雨がそのまま残っていて、石畳の継ぎ目から細い水が走っています。踵から踏み込むと滑りやすいので、足は“置く”。歩幅は小さく、母指球でそっと体重移動を心がけるだけで、泥跳ねも気持ちも落ち着きました。
一の又小屋では軽く水分と補給。森は湿り気を帯びて、苔はしっとり艶やか。道の中央は掘れて水が溜まっているところが多く、わだちの縁や露出した石を渡りながら進みます。夜行バスの名残りで体は少し重いのに、空気が冷たくて呼吸は軽い――そんな不思議なバランスでした。
女人堂の鳥居が見えるとほっとします。ベンチで靴紐を締め直し、ストックの長さもひと目盛りだけ短く。ここを境に植生が低くなり、視界が開けて風が通い始めました。泥は次第に消え、足元は乾いた火山礫。さっきまでの滑りやすさが嘘のように、歩幅とテンポが自然に伸びていきます。

石室山荘に着くころには、背中の汗が風でさらさらに。祠に手を合わせてから最終盤の登りへ。ザレでは踵を取られないようフラット寄りに接地し、ピッチを細かく。ガスが切れるたびに、剣ヶ峰の輪郭が近づいて、胸が高鳴ります。
正午過ぎ、剣ヶ峰に到着。社の前でそっと一礼し、ぐるりと景色をひと回し。雲の切れ間から射す陽が砂礫を銀色に光らせ、3000mの空がすぐそこにあります。


三角点まで足を延ばして静かな標石に触れ、再び剣ヶ峰に戻りました。下山に移る前、すぐ下にあるシェルターの前で立ち止まり、雨と風の強い日にここがどれだけの安心になるだろう、と想像します。

戻りは石室山荘までリズム良く。女人堂を過ぎると再び泥の世界が始まり、足運びを“置く歩き”に戻します。

板の木道や丸太階段は真正面から踏まず、わずかに斜めに接地。膝にやさしいようピッチを細かく保つと、滑りも跳ねも抑えられました。ロープウェイの音が近づくと、今日の山歩きがほどよくまとまったことを実感。上駅で泥を軽く落として、きっぱり下山です。
5. まとめ
雨後の樹林帯と乾いた高所――路面の切り替えがはっきりしていて、歩きの技術を試される一日でした。泥の区間は「歩幅を小さく・足を置く・道の縁を拾う」、上部は「フラット気味でピッチ一定」。たったこれだけで安心感がぐっと増します。夜行バスでの移動でも、ロープウェイのおかげでコンパクトに3000mの空を満喫できました。次は二ノ池方面の周回や、季節を変えてまた訪れたい――そんな余韻を連れて、帰りの車窓を眺めました。

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