※この記事は過去の山行記録です。
2025年のゴールデンウィークに、残雪期の槍ヶ岳へ3日間の山行をしてきました。
目的は「厳冬期に槍ヶ岳を登れるか」を見据えた偵察。
結果から言うと、今の自分の実力では厳冬期は無理。
技術も体力も判断力も、すべてが足りないことを痛感しました。
でも、それでもこの山行はかけがえのない経験でした。
今まで行った山行の中で一番しんどかったけれど、残雪期の真っ白な槍ヶ岳は格別に綺麗で、胸の奥に静かに残る景色になりました。
1日目(2025/4/29・新穂高温泉〜槍平小屋)
10:24 奥飛騨・新穂高温泉 ホテル穂高 → 新穂高ロープウェイ → 新穂高温泉駅 → 市営新穂高第2駐車場 →
11:15 穂高平小屋 → 12:09 白出沢出合 → 12:57 白出沢口 → 14:30 滝谷避難小屋 → 16:01 槍平小屋
(合計 6時間17分・距離 9.7km・登り1024m / 下り140m・休憩29分)
前日の夜行バスで大阪から松本へ。そこから平湯温泉経由で新穂高温泉に到着しました。
今回は避難小屋泊の予定でしたが、万が一に備えてテント装備も持参。70リットルザックに20kg超えという重荷で、歩くだけで息が上がります。
天気は快晴。夏道から次第に雪道へ。薄いトレースを追いながら、転がる雪玉のデブリを横目に歩く時は、ちょっとした非日常に包まれる感覚でした。
槍平小屋に到着したときは誰もおらず、静かな冬季小屋。雪を溶かして水を作っていると、年配の3人グループが到着しました。
同じバスに乗っていた人たちで、人生で初めて「トレースありがとうございます」と声をかけてもらい、ちょっと照れながらも心が温かくなりました。
夕食はうまかっちゃん。夜はダウン上下に象足、シュラフにくるまれて眠りにつきます。雪の夜は静かで、しんとした空気の中で心が落ち着いていきました。

2日目(2025/4/30・槍平小屋〜槍ヶ岳〜槍平小屋)
5:37 槍平小屋 → 10:23 飛騨乗越 → 10:48 槍ヶ岳山荘テント場 → 11:07 槍ヶ岳山荘 →
11:30 槍ヶ岳 → 13:00 槍ヶ岳山荘 → 16:46 槍ヶ岳山荘テント場 → 槍ヶ岳山荘
(合計 11時間24分・距離 7.9km・登り1248m / 下り1247m・休憩2時間20分)
この日は山行の核心部。
グレーシャーの雨蓋を外して小型ザックにして、必要な荷物だけを詰め込み、残りは小屋にデポしました。
トレースはなく、地形とGPSを頼りに進みます。真っ白な雪面に自分の線を描いていく時間は、不思議と楽しくて、少し誇らしい気持ちになりました。

飛騨沢では膝上まで埋まるラッセルに苦戦し、尾根に逃げながら進みます。
急登に入ると「10歩歩いて一息」の繰り返し。青空の下、登りが終わらない感覚に「永遠」を感じました。

やっと飛騨乗越に到着。全身で「ここまで来たんだ」と思うと、胸の奥にじんわりとした安堵が広がりました。

少し登ってテント場を越え、槍ヶ岳山荘へ。山荘で飲んだコーラとccレモンは、体に染み渡って、言葉にできないご褒美のようでした。

そして穂先へ。

氷に埋まったはしごをピッケルで突破しながら登頂。
カメラ片手にアイゼンだけで登ってきた外国人を見て「信じられない…」と苦笑い。


頂上からの景色は格別。しんどさもすべて吹き飛ぶような美しさで、思わず笑みがこぼれました。
下りではルートを外れて冷や汗をかいたり、飛騨乗越からはシリセードで一気に下ったりと、最後まで気の抜けない一日。
それでも小屋に戻ってうまかっちゃんを食べたときは、なんだか愛おしい時間に変わっていました。
3日目(2025/5/1・槍平小屋〜新穂高温泉)
5:32 槍平小屋 → 7:00 滝谷避難小屋 → 9:12 白出沢口 → 9:49 穂高平小屋 →
10:30 市営新穂高第2駐車場 → 新穂高温泉駅 → 新穂高ロープウェイ → 10:32 ゴール地点
(合計 4時間59分・距離 9.6km・登り150m / 下り1035m・休憩31分)
最終日は早朝に出発。登りで苦労したデブリ帯も、下りでは拍子抜けするほどスムーズに通過。
渡渉も問題なく、滝谷避難小屋だけは不気味で、つい足早に通り過ぎました。
白出沢でアイゼンを外し、林道を歩いて新穂高へ。
その途中で、大きな猿とすれ違いました。道を譲ると、まるで会釈するように一瞬こちらを見て去っていきます。
「かわいいな」と思わず声が出て、気持ちがふっと和みました。

その後は新穂高まで淡々と歩き、土産物を買ったり、温泉の情報を探したり。
新穂高センターで「ひがくの湯」を紹介していただき、その親切さに心がほっとしました。
バスで移動し、露天風呂に浸かったとき、全身から疲れがゆっくり抜けていくのを感じました。とても幸せな締めくくりでした。
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