熊野古道・中辺路(滝尻〜那智大社)4日間の記録

過去の山行

※この記事は過去の山行記録です。

熊野古道は世界遺産として知られ、日本人でも外国人でも「一度は歩いてみたい」と思う人が多い道。
私自身も熊野古道が好きで、これまで小辺路や大峯奥駈道を歩いてきました。ただ、中辺路はまだ未踏で、ずっと気になっていました。

せっかく歩くなら「本宮で終わり」では物足りない気がして、今回は那智まで通しで歩くことにしました。

結果は――暮らしと自然が混ざる中辺路と、修行の道としての大雲取越・小雲取越。両方を体験したことで、熊野古道の奥深さを改めて感じられる旅となりました。


全体のルート概要

  • 中辺路(滝尻〜熊野本宮大社)
     距離:約38〜40km
     所要時間:健脚で2日、ゆったり3日
     特徴:峠越えはあるが整備されていて歩きやすい。川沿いや集落が多く補給も安心。
     → 「暮らしと自然が交わる巡礼の道」
  • 熊野本宮大社〜那智大社(大雲取越・小雲取越)
     距離:約30〜35km(大雲取越:約14〜15km、小雲取越:約13〜14km)
     所要時間:一般的に2日(小口で1泊)
     特徴:大雲取越は急登や急坂、小雲取越も起伏が続く。人は少なく、静寂が支配する。
     → 「修行の道」

全体で約70km。私は2024年12月の平日に4日間で歩きました。寒さと静けさに包まれ、時折「誰もいない道を自分だけが歩いている」ような感覚に。孤独と心地よさが同居する、不思議な時間でした。


1日目(2024/12/19・滝尻〜熊瀬川手前)

8:32 滝尻王子 → 12:15 高原霧の里休憩所 → 14:20 継桜王子 → 17:05 熊瀬川手前の東屋
(合計 8時間33分・距離 約20km・登り1423m / 下り1393m・休憩40分)

スタートは滝尻王子。熊野古道の象徴的な入口です。

荷物は約13kg。テント泊装備を背負って歩くだけでも、じわじわと体力を削られます。道自体は整っていましたが、重さが効いて一歩一歩が重かったです。

夜は熊瀬川手前の東屋に宿泊。ベンチで寝袋に入りましたが、12月の冷え込みは厳しく、人の気配が一切ない静けさに少しビビりながら夜を過ごしました。


2日目(2024/12/20・熊瀬川〜熊野本宮大社〜川湯キャンプ場)

6:12 東屋 → 9:45 継桜王子 → 13:10 熊野本宮大社 → 14:20 川湯キャンプ場
(合計 8時間08分・距離 約18km・登り1120m / 下り1095m・休憩45分)

この日は熊野本宮大社を目指してひたすら歩きました。川沿いを進む区間が多く、水には困りません。
近づくにつれ、外国人ハイカーの姿が目立つようになり、世界遺産の道であることを実感しました。

熊野本宮はこれまでに何度も訪れた場所。新鮮な感動というより「歩いてたどり着いた」という達成感がありました。

さらに1時間ほど歩いて川湯キャンプ場へ。まわりは豪華なオートキャンプの人ばかり。ツェルトを張った自分の姿はどう見ても“浮いて”いて、少し切ない瞬間でした。

本当は温泉を楽しみにして水着まで用意していましたが、足の裏の水ぶくれが痛く、温泉まで歩くのは断念。代わりに川に全身で浸かりました。12月の川は冷たく、周囲からの視線も気になりましたが、それでも気持ち良かったです。


3日目(2024/12/21・川湯〜小口自然の家)

6:45 川湯キャンプ場 → 12:40 大雲取越 → 16:10 小口自然の家
(合計 9時間25分・距離 約19km・登り1450m / 下り1410m・休憩50分)

この日は大雲取越。朝から雨で、レインコートを着てのスタートでした。夏なら蒸れてつらかったと思いますが、冬なので逆にちょうど良い体感。呼吸と足音だけが響く、しっとりした山道を進みました。

小口自然の家に到着すると、翌日がお祭りだと聞きました。竹酒やイノシシ鍋が振る舞われる予定だと知り、「1日遅ければなぁ」と少し残念。

宿泊は施設の方のご厚意で、運動会に使うような大きなテントの下を貸していただき、その中にツェルトを張らせてもらいました。雨を避けられるうえ、ドラム缶の焚き火で暖もとれて、本当にありがたかったです。

夜は祭り準備でライトアップされた木が幻想的で、雨の山旅に彩りを添えてくれました。

この日は他の人はみんな小屋泊で、テント泊は私ひとり。夕方になると外国人二人組が「川に入ってくる!」と元気よく出かけたものの、あまりの冷たさにすぐに断念して帰ってきました。私は前日に全身で入っているので、ちょっと得意げな気分に。


4日目(2024/12/22・小口〜那智大社)

6:30 小口自然の家 → 11:45 小雲取越 → 14:15 那智高原公園 → 15:00 青岸渡寺・那智大社・那智の滝
(合計 8時間30分・距離 約18km・登り1392m / 下り1368m・休憩1時間)

最終日は小雲取越を越えて那智へ。道中はお地蔵さんが点々と並び、古道の歴史を強く感じました。

那智高原公園に降り立った瞬間、「登山道が終わった」という安堵と達成感が一気に押し寄せます。

ゴールは青岸渡寺と那智の滝。荘厳なお寺と轟音を響かせる滝が、この旅の締めくくりにふさわしい光景でした。


まとめ

全行程で約70km、4日間の熊野古道歩き。
初日から足の裏に大きな水ぶくれができ、特に右足小指は帰宅後に腫れて爪が剥がれるほどでした。痛みに耐えながらも歩き切れたことが自信につながりました。

初めて使ったダブルストックは登り下りの安定感や推進力になり、ツェルトを張るときのポール代わりにもなって大活躍。唯一の難点は、両手がふさがるので歩きながらスマホや行動食を扱いにくいことくらいでした。

中辺路は「暮らしと自然が混じる巡礼の道」。
那智へ続く大雲取越・小雲取越は「人の気配が薄い修行の道」。
両者のコントラストを味わえたことが、今回の山行の最大の収穫です。

険しいアルプスのような縦走とは違いますが、熊野古道には「歩いた人だけが知る静けさ」があります。
そして最後に残ったのは――達成感と満足感でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました