概要
夜はシュラフなしで、上下ダウン+象足で眠りましたが、ツェルトの入口を開けて結露対策をしたせいで冷えこみが強く、2〜3時間おきに目が覚めました。小雨もときどき降っていました。
ご来光を目指して暗いうちに出発し、ヘッデンの灯りで濡れた梯子や岩場をたどりました。
頂上が近づくほど岩が険しくなり、「ここを下るのは嫌だなぁ」と思いながらも、一歩ずつ丁寧に登りました。
山頂には日の出少し前に到着。とても冷えていたのでダウンとレインウェアを重ね着してしのぎました。
残念ながら山頂はガスで真っ白で、太陽の気配だけがぼんやり。諦めて下り始めると、雲がふっと割れて雲海・富士山・鳳凰三山・烏帽子岩の剣が一気に現れ、胸がほどけるようにうれしかったです。
2日目(10/12・日)
03:37 テントサイト → 05:20 甲斐駒ヶ岳 → 07:51 テントサイト → 08:35 七丈第二小屋 → 08:41 七丈第一小屋 → 10:41 前屏風ノ頭 → 12:53 竹宇駒ヶ岳神社 → 13:01 甲斐駒ヶ岳登山口 → 13:02 ゴール(下山)
(合計 9時間24分・距離 11.2km・登り 777m / 下り 2410m・休憩 46分)
ヘッドランプの小さな輪を頼りに、濡れた段差と砂礫を一段ずつ拾っていきます。
暗いと踏み跡が読みにくく、梯子も岩もいつもより長く感じました。
七合目の標識でひと息ついて深呼吸。夜の冷気が頬にきゅっと刺さります。

岩場はだんだん荒々しくなり、手足の置き場を確かめながら前へ進みます。
山頂には日の出直前に到着。祠に手を合わせましたが、視界は白い壁のようでした。
とても寒かったのでダウン+レインウェアでしっかり体を包み、体温が逃げないようにしました。


諦めて少し下ると、雲がぱっと裂けました。
金色に縁どられた雲海、端正な富士山、重なる鳳凰三山、そして光を受けて立つ烏帽子岩の剣。
ほんの数分の劇的な変化に、思わず「来てよかった」と微笑んでしまいました。


ご来光を狙っていたのは、山頂では私たち以外に2名だけでした。
下山に入ってからは多くの登山者とすれ違い、明るくなってから登り始めたのだろうな、と納得しました。
テント場に戻るころには青空が広がり、日差しがまぶしくて暑いくらいでした。
ツェルトを乾かしながら手早く片付け、装備を整えて下山に移りました。
黒戸尾根の下りはやはり長くて骨太です。
ピストンに挑戦している方や、トレランの軽装で駆け上がる方とも次々にすれ違い、その体力と胆力に素直に敬意を抱きました。
歩いて歩いて、ようやく一合目の看板。
「もう少し」と自分に言い聞かせて進むと、現れたのは「あと30分」の表示で、さすがに心が折れかけましたが、ペースを崩さずに歩き切りました。
鳥居に戻った瞬間、全身に「終わった」が広がりました。
売店でサイダーを買って一服。炭酸が喉にしみて、からだがふっと軽くなりました。
そこから徒歩20分で尾白の湯へ。ゆっくり温まり、併設レストランで卵かけご飯定食をいただきました。
やさしい塩気と温かいお米が、がんばった体にすっと染みて、とてもおいしかったです。
その後はタクシーで小淵沢駅へ、塩尻経由で帰路につきました。
途中、道端の茂みで鹿と目が合いました。
長い登り下りを見送ってくれたようで、静かにうれしい出会いでした。

まとめ
前にソロで甲斐駒ヶ岳に登ったのは8年前でした。
そのときは北沢峠からで、昼過ぎに山頂に着いて1時間ほど景色を眺め、暗い中を下った記憶があります。
今回は2回目にして三大急登の黒戸尾根。
一泊で登り切れてうれしかった反面、寒さも長さも岩場も、どれも濃くて正直かなりしんどかったです。
「もう黒戸尾根には近づかない」と心に決めたつもりですが、
雲が割れた一瞬に見た光の景色を思い出すと、少しだけまた揺れてしまいます。
そんな余韻が、今もやさしく残っています。

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