白馬三山から不帰ノ嶮へ—秋色の稜線をわたり唐松へ(テント泊)

過去の山行

1. 注意書き

※この山行は過去の記録(2021年10月9日〜10月11日)です。

2. 白馬岳(白馬三山)とは

北アルプス北端に連なる白馬岳(2,932m)・杓子岳・白馬鑓ヶ岳の総称が白馬三山です。
大雪渓の涼やかな登りとのびやかな稜線が魅力。
南へ進むと表情が変わり、岩稜の**不帰ノ嶮(かえらずのけん)**が待っています。

3. 概要

前夜に夜行バスを乗り継いで猿倉へ。
初日は大雪渓を経て白馬岳頂上宿舎のテント場へ。
2日目は白馬三山を越えて不帰ノ嶮を通過し、唐松岳で泊。
3日目に八方尾根を下る計画でした。朝晩は冷え、日中は汗ばむ秋らしい三日間です。


4. 1日目(10/9・土)

08:03 猿倉荘 → 08:58 白馬尻小屋 → 11:45 岩室跡 → 12:59 白馬岳頂上宿舎 → 13:02 白馬岳頂上宿舎テント場(泊)
(合計 6時間49分・距離 6.4km・登り 1531m / 下り 53m・休憩 1時間56分)

夜行の余韻で少しぼんやり。
のんびり準備をしていたら、出発は一番最後になってしまいました。

白馬尻小屋までは10月とは思えない暑さ。
汗が上がって、上着を早々に一枚オフにします。

白馬尻からはお楽しみの大雪渓
4本爪の軽アイゼンを装着し、涼しい風に背中を押されながら一歩ずつ。

登り始めて間もなく、下半身に血がにじみズボンが破れた登山者とすれ違い、思わず声をかけました。
「転んだだけ、大丈夫」とのこと。足取りもしっかりで胸をなでおろし、気に留めつつ先へ。

夏よりトレースが明瞭で歩きやすい雪渓でした。
ただ、雪が切れるころにどっと疲れが来て、砂礫の登りは黙々と。

稜線が近づくほど、白から秋色へと景色が切り替わっていきます。

白馬岳頂上宿舎のテント場に到着。
水が使い放題で本当にありがたい場所。

風向きを見て設営し、温かい飲み物で一息。
空は紫がかったオレンジに変わり、やわらかな夕暮れでした。


4. 2日目(10/10・日)

05:17 テント場 → 06:05 丸山 → 07:52 白馬鑓ヶ岳 → 09:13 天狗山荘 → 09:30 天狗の頭 → 12:56 不帰ノ嶮 → 13:58 唐松岳 → 14:34 唐松岳頂上山荘(泊)
(合計 10時間42分・距離 10.1km・登り 1066m / 下り 1225m・休憩 3時間4分)

冷え込みに負けて暗発は断念。
空が明るみはじめてから、丸山・白馬鑓ヶ岳を越えました。

天狗山荘でヘルメットを装着。
天狗の頭からの天狗の大下りに足を入れたところで、いよいよ不帰ノ嶮が始まります。
ザレ混じりの急斜面は、重心をやや低く、膝を柔らかく使って“置く”歩き。
浮石に乗らないこと、前後の間隔を広めにとること――落石を出さない・もらわない意識が大切でした。

最初のコルを踏むと、岩は乾き気味でフリクション良好。
鎖やステップは要所にあるものの、基本は三点支持+体を岩に寄せるで十分進めます。
切れ落ちが気になる場面は、胸を面に当てて視線を上へ。
見上げるほどに不安は小さく、足の置き場がすっと見えてきます。

短いトラバースはステップが浅めなので、踵を落とし過ぎず擦り足でそっと重心移動。
呼吸が上がったら小さく立ち止まり、目線だけ先へ送ると、心拍が落ち着きました。

雰囲気が一段切り替わるのが、核心部の二峰北峰
ここはホールドが甘く、引っかかりが少ないので、腕で引き上げたくなる気持ちをぐっと抑え、
腰を低く保ちつつ“足で乗る”感覚に切り替えます。
右の空間へ視線が流れると怖さが増すので、左上へ目線固定→一手ずつ
最後の一段にそっと乗れた瞬間、風の音が明るく戻ってきました。

緊張の糸がほぐれるころ、唐松岳の肩が近づきます。
山頂では、私の来た方角を見た軽装の二人組が「そっちにルートあったっけ?」と不思議顔。

少し誇らしい気持ちで、少し下のテント場に設営。
やり切った感のまま、気持ちよく眠りに落ちました。


4. 3日目(10/11・月)

05:19 唐松岳頂上山荘 → 06:37 丸山ケルン → 06:49 扇雪渓 → 07:42 八方山 → 08:14 八方池山荘 → 08:16 ゴール(下山)
(合計 3時間03分・距離 5.1km・登り 96m / 下り 835m・休憩 42分)

テント場から真っ赤な朝日を見送り、八方尾根へ。
木道が現れるたびに人が増え、ロープウェー手前は小さな行列。

山の時間がやわらぎ、日常へ戻る合図にちょっとほっとしました。


5. まとめ

白馬のやわらかな稜線から、不帰ノ嶮のピリッとした岩稜へ。
景色も歩き方も切り替わる、秋の北アルプスらしい三日間でした。

怖さを小さくするコツは、やっぱり基本どおり。
三点支持、体を岩に寄せる、足で静かに“乗る”。

唐松の空はやさしく、八方のにぎわいは元気。
ほどよい緊張と充足感を、そっとポケットにしまって下山しました。

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