厳冬期の仙丈ヶ岳: 雪山への挑戦

山行

仙丈ヶ岳とは

仙丈ヶ岳は南アルプス北部に位置する標高3033mの山で、「南アルプスの女王」と呼ばれています。
やさしい名前とは裏腹に、冬の仙丈ヶ岳はとても厳しく、静かで、少し近寄りがたい雰囲気をまとっています。

それでも、その美しさを一度知ってしまうと、また会いに行きたくなる。
そんな不思議な魅力のある山です。


概要

秋に黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳へ登ったとき、ふと目に入った仙丈ヶ岳。
白く、堂々としていて、「年末にあそこへ行きたい」と自然に思いました。

それから少しずつ準備を重ね、装備を見直し、荷物はできる限り厳選。
それでも背負ったザックは約20kg。
担いだ瞬間にずっしりと重く、電車の乗り降りだけでも、正直かなりしんどかったです。

今回は地蔵尾根からのソロ・テント泊。
快晴予報ではあるけれど、稜線に出れば強風は避けられない。
自分の体力と判断力、その両方を試される山行になると分かっていました。


1日目(12/28)

09:30 柏木登山口 → 13:17 穴沢ノ頭付近(泊)
(合計 7時間48分・距離 10.6km・登り 1498m / 下り 242m・休憩 1時間18分)

前日の夜、夜行バスで出発。
不思議とよく眠れて、目が覚めたときは少しほっとしました。

松本駅から伊那北へ。
着込んでいたつもりでも、駅に降り立った瞬間の冷たい空気に、思わず肩をすくめます。
「あ、冬の南アルプスに来たんだな」と、ここでようやく実感しました。

当初は駒ヶ根駅からタクシーの予定でしたが、柏木登山口への近道が冬季閉鎖。
伊那からタクシーを勧められ、電話すると片道17000円。
思わず言葉を失います。

悩んだ末に選んだのがレンタカー。
結果的に1時間延長とガソリン代込みで15000円ほど。
かなり助かりました。
「今後はレンタカーも選択肢に入れよう」と、心にメモ。

柏木登山口に着くと、駐車場はすでに満車。
少し戻って林道に停めることにしました。グレーな判断なので、同じことをする場合は自己責任で。

準備を整えて歩き出します。
駐車場周辺には雪はほとんどなく、登山口で水を補給してチェーンスパイクを装着。
20kgを担いで一歩踏み出すと、じわっと肩に重さが食い込みました。

しばらく歩くと、道にうっすら雪が現れ、凍っている場所も。
早めにスパイクを履いておいてよかった、と胸をなで下ろします。

樹林帯は林道と何度も交差し、道が分かりづらい。
何度も戻ったり、間違えたり。
そのうち、トレッキングポールのスノーバスケットが片方なくなっていることに気づき、少し気持ちが沈みました。

細いトラバースを歩いていると、下に林道が見え、下山者がのんびり歩いているのが見えました。
「あっちの方が楽そう…」と思いながらも合流できず、帰りは絶対に林道を使おうと心に決めます。

景色はほとんどなく、ひたすら続く樹林帯。
単調で、静かで、体力をじわじわ削られていきます。
途中、鹿の群れに出会い、ほんの少しだけ心が和らぎました。

雪は次第に深くなり、松峰小屋分岐を過ぎたあたりから傾斜がきつくなってきます。

SI1

トレースがあるとはいえ、体力は確実に削られていきました。
暑くてインナーにハードシェル、手袋は夏用の薄いもの。
それでも体感は-5℃ほどだったと思います。

本当は丸山谷ノ頭を越えたかったけれど、暗くなり始めたため、少し手前でテントを張ることに。
ここを勝手に「キャンプ1」と呼ぶことにします。

20kgを担いで10km、標高差1500m。
「まだ動けてるな」と、ちょっとだけ自分を褒めました。

シャベルで整地し、テントを張り、水を2.5L作り終えた頃には真っ暗。
晩ごはんは MOUNTAIN GOURMET LAB. 香ばし海老のレモン麻婆飯 と、うまかっちゃん。
冷えた体に、ちゃんとした味のごはんがしみます。
レモンの酸味とスパイスが効いていて、本当においしい。ドライフルーツまで妙においしく感じました。

夜は-10℃以下。
樹林帯のおかげで風は穏やかでしたが、しんしんと冷えます。
21時頃、寝袋に潜り込み、明日に備えて目を閉じました。


2日目(12/29)

05:32 丸山谷ノ頭 → 08:25 仙丈ヶ岳 → 16:22 柏木登山口
(合計 11時間39分・距離 17.4km・登り 1066m / 下り 2322m・休憩 1時間41分)

2時半起床。正直、眠い。
水を作り、朝食をとり、片付けているうちに4時半出発になっていました。

空は晴れていたけれど、星はあまり見えません。
月が明るかったのか、樹林帯で空が狭かったのかもしれません。

雨蓋を外し、小型ザックに水・行動食・カメラだけを入れてアタック開始。
残りはテントにデポ。
この使い方ができるのは、ミステリーランチ・グレーシャーの良いところです。

出発直後から丸山谷ノ頭への急登。
大きい荷物でここを登るのは相当きついので、テント位置は正解だったと思います。

誰も出発しておらず、トレースも消えかけ。
グローブを外すと、指先が一瞬で痛くなります。

稜線直下で空が明るくなり、朝日に照らされた中央アルプスと雲海が現れました。

そして稜線に出た瞬間、爆風。
慌ててゴーグルを付けようとすると、曇り止めが一瞬で凍結。
素手の時間が長くなり、指先がじんじん痛みます。

そこからは、遠くに見える仙丈ヶ岳を目指してひたすら登るだけ。
トレースはほぼなく、踏み抜きながらの登りで、想像以上に消耗しました。

予定より1時間半遅れて登頂。
山頂は貸し切りで、青空と白い雪のコントラストが本当にきれいでした。

ただし風は凄まじく、グローブを外せるのは10秒が限界。
360度カメラを自撮り棒につけて撮影。
ドローン視点で撮れるこの感じが好きです。

満足して下山開始。
数人とすれ違い、やはり山頂一番乗りだったようです。

ショートカットを使い、登りより1時間短縮してキャンプ1へ。
日が昇っても寒く、ナルゲンの水は凍っていました。
やっぱり水筒が正解ですね。

テントを撤収し、重い荷物を背負って下山。
長くて単調。でも林道を使えたのは救いでした。

途中、右足のチェーンスパイクがなくなっていることに気づき、少しだけ落ち込みながら歩き続けます。

無事下山し、暖房の効いた車に座った瞬間、心からほっとしました。
「車って最高だな」と思いました。

伊那北駅まで走り、終電ギリギリで帰宅。
1分遅れていたら帰れなかったと思います。


まとめ

南アルプスの女王は、やっぱり厳しくて、それ以上に美しい山でした。

地蔵尾根1泊は正直しんどすぎました。
2泊にすべきだったし、たぶんもう二度と行きません。

それでも、厳冬期の雪山はきれいで、心を掴まれてしまいます。
だから、きっとまたどこかへ行ってしまうんだと思います。

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