登山道具って、壊れたから使わなくなるとは限らないんですよね。
むしろ私の場合、「嫌いじゃないし、ちゃんと役に立ってくれた。でも今の山行には別の道具の方が合う」という理由で、一軍から外れたものの方が多いです。
登山歴が長くなるにつれて、歩く距離も、泊まり方も、装備に求めるものも変わりました。今回は、そんなふうに長く使った末に出番が減った7つの道具と、なぜ使わなくなったのかをまとめます。
どれも「買って失敗した道具」ではありません。むしろ、今の装備にたどり着くまでに必要だった道具ばかりです。
1. 祖母から譲ってもらったT字シングルストック
最初は、祖母から譲ってもらったT字型のシングルストックを長く使っていました。
かなり丈夫で、調子が悪くなれば部品を探して直しながら使っていた一本です。登山道具というより、少し思い入れのある道具に近かったかもしれません。
ただ、歩く距離が長くなり、縦走や荷物の重い山行が増えるにつれて、片手だけで支えるシングルストックより、両手で使えるダブルストックの方が楽だと感じる場面が増えました。
特に長時間歩いた後半は、登りで身体を押し上げたり、下りで脚への負担を逃がしたりできるダブルストックのありがたさが大きい。今はそちらが中心です。
それでも、このT字ストックは簡単には捨てられません。性能だけで入れ替えているつもりでも、道具にはこういう別の価値が残るんだなと思います。
2. THERMAREST リッジレスト クラシック
リッジレストを使っていた頃にいちばん好きだったのは、「壊れることをほとんど考えなくていい」安心感でした。
広げればすぐ寝られるし、多少雑に扱っても気にならない。エアマットのように、夜中に穴が開いて地面へ沈んでいく心配もありません。
その代わり、やっぱり嵩張ります。ザックの外に付けると大きく、長い縦走ほど他の装備との収まりが気になるようになりました。
そして装備を見直していくうちに、「絶対に壊れないこと」より「小さく収納できて、ちゃんと眠れること」を優先するようになりました。
今の中心はNEMO Tensor All-Season Regular Mummy。R値5.4、厚さ9cm、本体重量400gで、以前の私なら少し贅沢に感じた寝心地を、今は長い山行を続けるための装備として見ています。NEMO公式の現行仕様も確認しました。NEMO Tensor All-Seasonの製品ページを見る
エアマットなのでパンクの不安が消えたわけではありません。でも、昔より睡眠をかなり大事にするようになった。それが一軍交代のいちばん大きな理由です。
Tensor All-Seasonについては、こちらの記事で詳しく書いています。

3. mont-bell #3相当の3シーズン用ダウンシュラフ
3シーズン用のダウンシュラフも、以前は「テント泊なら持って行くもの」でした。
ただ、使っていく中で気になったのが結露です。朝、湿ったダウンを見ると少し嫌な気分になるし、連泊ではその湿気を次の日へ持ち越したくありません。
それなら、防寒着として持っているダウンを就寝時にも使い、その上からシュラフカバーを組み合わせた方が、自分の装備全体としては無駄が少ない。そう考えるようになりました。
現在の3シーズンは上下ダウン+シュラフカバーが基本で、夏以外は必要に応じて象足も追加します。
もちろん、これは万人向けではありません。寝袋一枚に任せる方が分かりやすく、安心できる人も多いと思います。
私の場合は軽量化そのものより、「同じ装備に二つの仕事をしてもらう」方がしっくりきました。行動を終えた後に着る防寒着が、そのまま寝具の一部になる。その考え方に変わってから、3シーズン用シュラフの出番がなくなりました。
4. モーリアン ヒートパック
モーリアンのヒートパックは、かなり長く使いました。体感では5年くらい付き合った道具です。
火を使わずにレトルト食品を温められるので、テントでの夕食には便利でした。中華風おこわをヒートパックで温めて、その間にクッカーでラーメンを作る。あの組み合わせは結構好きでした。
でも、毎回きれいに温まるわけではなかったんですよね。
感覚としては2〜3回に1回くらい、温めが足りず、ご飯が硬いまま残ることがありました。一日歩いて、ようやく座って、楽しみに開けたご飯がボソボソ。これは地味だけどかなり悲しいです。
発熱剤と加熱袋を持つぶん荷物も増えます。それなら、もっと単純にお湯で仕上げられて、味もちゃんと楽しめるものにしようと山の食事自体を変えました。
今はMOUNTAIN GOURMET LAB.のような山ごはんを選ぶことが増えています。現在の商品は公式サイトから直接確認できます。MOUNTAIN GOURMET LAB.を見る
便利さではヒートパックにも良さがあります。でも私の場合、最終的に勝ったのは「ちゃんと美味しく食べたい」でした。
そのあたりは、こちらの記事にもまとめています。

5. SCARPAのハイカット登山靴
ハイカットの登山靴は、岩稜帯では今でも頼もしさを感じる道具です。
足首まわりの安心感があって、岩の多い場所を歩く時には「やっぱり登山靴っていいな」と思う場面もあります。
ただ、私の山行はだんだん長距離寄りになりました。そうなると、一歩ごとの重さが気になります。
短い区間だけ見ればハイカットを履きたい。でも一日、二日、三日と歩く山行全体で考えると、軽いローカットの方が脚を残しやすい。今の3シーズンはローカットが中心です。
だから「ハイカットは不要」ではなく、私の歩き方が変わっただけ。
道具の評価って、道具そのものだけでは決まらないんですよね。歩く距離が変われば、昨日まで長所だったものが、今日は少し重たく感じることがあります。
6. スキットル
これは道具の性能ではなく、自分の行動を変えた結果、一軍から外れました。
以前、白峰三山を歩いた時にスキットルへお酒を入れて持って行き、朝に飲んだことがあります。
山で飲むお酒には特別感があります。テント場で一日を終えて、景色を眺めながら少しだけ飲む。そういう楽しみ方自体を否定するつもりはありません。
でも、自分の場合は判断力への影響や、その後の行動を考えると、持って行くメリットよりリスクの方が気になるようになりました。
それ以降、山行中のお酒はやめています。
この7つの中では、いちばん「装備の進化」と関係のない引退理由です。でも、長く登山を続けるなら、道具だけでなく自分の行動も少しずつ変わっていく。それも装備を見直すのと同じくらい大事だと思っています。
7. GREGORY デナリ75
大型ザックでは、GREGORY デナリ75も長く使いました。
容量が大きく、荷物をまとめて飲み込んでくれる安心感はあります。でも私の体にはウエストベルトがうまく合わず、20kg前後の荷物でも腰が痛くなることがありました。
大型ザックは、カタログ上の容量や本体重量だけでは本当に分かりにくいです。
同じ20kgでも、肩で受けるのか、腰へきれいに落とせるのかで疲れ方が全然違う。デナリ75を使っていたからこそ、そこを強く意識するようになりました。
その後はMYSTERY RANCH Glacierへ移行。腰への荷重の乗り方が自分には合っていて、大型ザックを見る時の基準そのものが変わりました。
なお、Glacierを含むMYSTERY RANCHのアウトドアラインは現在の展開をもって生産・販売終了が案内されています。今から同じものを積極的に買うというより、「私が大型ザックに何を求めるようになったか」を説明する道具としてここでは挙げています。
デナリ75が悪かったわけではありません。ただ、私の体には合わなかった。大型ザックについては、この違いがいちばん大きいと思います。
使わなくなった理由を並べると、今の装備選びが見えてきた
7つを並べてみると、昔より軽いものを選ぶようになった、というだけではありませんでした。
リッジレストからエアマットへ変えたのは、収納性だけでなく睡眠を大事にするようになったから。ヒートパックをやめたのは、荷物よりも夕食の満足感を優先したから。デナリ75からGlacierへ変えたのは、スペックより自分の体へのフィットを重く見るようになったからです。
逆に、祖母のT字ストックみたいに、使わなくなっても手放しにくいものもあります。
登山道具は、買った瞬間のレビューだけでは分からないことが多いです。何年か使って、持って行かなくなって、その理由を振り返った時に初めて分かることもあります。
今の一軍も、数年後にはまた変わっているはずです。
少し寂しいけれど、それだけ山の歩き方が変わってきたということ。たぶん、これからもそんなふうに入れ替えながら、自分に合う装備を探していくんだと思います。

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